アブシンベル神殿

世界中の古代遺跡の中でも最も驚異的であるだけでなく、アスワンから280kmも離れたアブシンベルの大小の2つの神殿の移築と再建はまさに歴史的大事業でした。 調査の結果、この壮大な神殿を含む広大な土地がアスワン・ハイ・ダムの建造によってできるナセル湖に沈むことが分かり、 エジプト政府はユネスコの支援を受けて世界中に向けてヌピア地方の遺跡救済キャンペーンを展開し、援助を仰ぎました。
1964年に始まり、1968年まで続いた救済事業では、2つの神殿は綿密な計画に沿って解体され、 3,000年前に築かれた元の位置より60M上へ平行移動するように移築されました。移動後、人口の山を砂岩で覆い、自然に見えるようにされました。
解体時のつなぎ目は考古遺物の専門家の手によって丁寧に埋められましたが、神殿内部には、そのつなぎ目が分かる箇所もあります。
いせきの入口に設けられた、ビジターセンターでは、この大規模な移動の様子を記録した写真が展示されています。
毎日3回行われる音と光りのショーは日替わりで8カ国後で行われています。


アブシンベルの大小の神殿の構造は独特です。このような岩山を穿って造る神殿は、渓谷地帯のヌピアで特徴的な様式です。
大神殿の正面に座る4体の巨像とその上部に刻まれた一列に並んで太陽をあがめる姿勢のヒヒ達の姿は、見るものに力強さと畏怖にも似た感動を与えることでしょう。


小神殿は、大神殿の北側に位置しています。愛と美の女神ハトホルとラムセス2世の妻ネフェルタリに捧げられたものです。
正面には6体の巨像があり、4体がラムセス2世、2体がネフェルタリ王妃であり、今日でも、神としてのファラオの男性的魅力、軍事力の強大さをアピールしています。
同時に小神殿には子供たちへの女性らしい家族愛が表されています。大神殿の中にはカデシュの戦いの詳細が精密な浮彫で描かれています。また、ラムセス2世と、ネフェルタリが神々と同席し、宗教儀式を行っている姿も表現されています。


アブシンベル大神殿では、毎年、普段は、届かない最奥の至聖所まで日光が届く日があります。
それは、例年2月22日と、10月22日に起こります。移築するときに、この現象が間違いなく起こるように、細心の注意が払われました。
光りはラー・ホルアクティ神(地平線のホルス)の像からラムセス2世像、アメン神像へと照らして行きますが、最後のプタハ神像にだけ日が当たらないまま終わります。